Column

経済学部教員コラム vol.31

経済学部教員コラム vol.31

名武 なつ紀

「本の編集作業から」

昨年(2013年)10月、長くかかわっていた本の出版プロジェクトが形になりました。高嶋修一・名武なつ紀編著『都市の公共と非公共 -20世紀の日本と東アジア-』(日本経済評論社、2013年)です。

筆者が専門とする都市経済史の分野における著作ですが、ここではその詳しい内容はさておき、本を作る過程で取り組んだ1つの作業 -本につける帯(おび)の文章を考えること- について、少し書いてみたいと思います。

本の帯は、正式には帯紙(おびがみ)というそうですが、本の表紙の下部をくるむようにつけられている細長い紙です。本の内容紹介や推薦文、また裏表紙のサイドには目次などがよく載せられています。
書店に並べられるとき、多くの本は書棚に置かれます。本は縦置きとなり、背表紙しか見えないため、帯はあまり役に立ちません。帯が生きるのは、タイトルに少し興味をもった人が、その本を手にとった場合です。
今回、様々な編集プロセスを経て、最後に帯の文章を考える作業が残りました。『都市の公共と非公共』という、やや込み入ったタイトルをもつ本書は、おもに公共性の側面から議論されて来た都市について、そこからこぼれおち、けれども都市を機能させるのに不可欠の役割を担っているはずの「何か」について、「非公共」と名付けつつ焦点をあてるものです。
このような、なじみにくいタイトルの本を支える帯は、どのようなものが適切か。いくつかの方向性が候補にあがり、共著者と検討をかさね、次のようになりました。

 公共性の限界と都市-
   人々の生存を保障し、
   都市の再生産を可能にする社会関係とは。
   「非公共」的領域も視野に入れ、
   20世紀アジア都市史をたどる試み。

ところで、インターネット上の書店でも、この帯は役に立っています。というのも、インターネット上で本が紹介される場合に、しばしばこのオビから取った文章が掲載されているからです。