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経済学部教員コラム vol.34

経済学部教員コラム vol.34

四宮 正親

前原正憲著「牛尾児四十年」復刻によせて

先頃、日産自動車販売協会のご協力のもと、法政大学イノベーション・マネジメント研究センターのご支援を得て、前原正憲著「牛尾児(モービル)四十年」を復刻しました。本史料は、1957(昭和32)年から1961(昭和36)年まで日産自動車株式会社常務取締役を務められた前原正憲氏が、日産自動車販売店協会誌(『会報』)に1962年3月から1969年4月にかけて連載された記事「牛尾児四十年」を復刻したものです。

同記事は、前原氏が直接間接に関わった事柄について舞台裏のエピソードを交えて紹介しており、下に述べるように、氏の経歴からしても、戦前から戦後60年代にかけての自動車流通販売に関する貴重な証言となっています。今日、入手するのは困難であり、ここに復刻することで、とりわけ、自動車の流通販売の研究に資するものと思います。

戦前の自動車輸入代理店、外国車ディーラー、フォード社の日本法人、日産自動車販売、満州自動車製造、日産ディーラー、日産自動車という前原氏の経歴の中心にあるのは、自動車の流通販売という仕事でした。前原氏の書き残した本史料は、戦前・戦中・戦後の自動車流通販売史として大変に貴重なものです。

従来、日本自動車産業の流通販売の形成史の中心にあったのは、トヨタの神谷正太郎氏でしたが、本史料の復刻により日産の流通販売史に大きな光があてられるようになったと思います。すでに、各方面から好意的な評価を得ており、日産の業務史料として活用いただけるそうです。

私は、これまでトヨタ、日産、ホンダの自動車流通販売に携わったみなさんにお話を伺って、それぞれ「オーラル・ヒストリー」として記録にとどめてきました。これからも、製造、生産管理に比べて研究が遅れている自動車の流通販売の研究に取り組んでいきます。