Column

経済学部教員コラム vol.49

経済学部教員コラム vol.49

岡部 祐介

「スポーツで人生を豊かなものに」

はじめまして。2015年度から経済学部共通科目教室に着任致しました、岡部祐介(おかべゆうすけ)です。担当科目は健康スポーツ、スポーツ論、ゼミナールです。この場をお借りして自己紹介ならびにゼミナール(研究)紹介をさせて頂きたいと思います。

 担当科目をみればおわかりかと思いますが、私は体育・スポーツを研究対象としています。体育・スポーツが単に好きだったあるいは得意だったからではありません。むしろ、体育・スポーツを、ある時期に徹底的に否定し、批判的にとらえ、深い思考を強制された経験があったからだと思います。
 物心ついた頃から、スポーツが常に生活の一部にありました。小学校を卒業するまで水泳を、中学から大学を卒業するまで陸上競技中・長距離を、それぞれ競技として結果を求めて取り組んできました。中学生の頃にはすでに、「箱根駅伝に出場すること」と、「保健体育の教員となり、運動部活動の指導者になること」という目標を公言していたことを覚えています。
 目標は、一面では達成されました。しかし、それは同時に大きな失敗・挫折でもありました。箱根駅伝に出場できたものの、チームとしても個人としても結果を残すことができず、不名誉な記録は残してしまい、いつからか強固に形成されていた「競技者としての自己・アイデンティティ」が崩壊し、大学を卒業するときには、その後何をして生きていけばよいのかわからなくなってしまいました。いわゆる「燃え尽きランナー」といわれた例で、競技はもちろん走ることもやめてしまいました。今にして思えば、「たかが箱根駅伝、たかがスポーツ」と割り切って、結果を受けとめられたかもしれません。しかし、当時の私の貧困なスポーツ観からは、とてもそのように受けとめることはできませんでした。

 きわめて個人的な経験であり、幼稚な問題意識かもしれませんが、私は、なぜ自分は走れなくなったのか、そのようなスポーツとは何なのかを問い、答えを出そうとしてきたように思います。その後スポーツ科学という学問領域について勉強するために大学院へ進学し、自身のライフコースを大きく転換させました。現在は、スポーツにおける勝利追求の思想史研究、特に「スポーツ根性論」研究に取り組んでいます。これは、上記の個人的な経験により生まれた問題意識から発展してきたものでもあります。

 スポーツの楽しさは、「する」ことや「みる」ことを通してのみ得られるものではありません。スポーツについて考え、学ぶことの楽しさを求めることもできます。思考や学びとは、人生を豊かにし、楽しむためのトレーニングだと思います。ゼミナールでは、「人生を豊かにするためのスポーツ」をスローガンに、受講生それぞれのスポーツにかかわる「問い」を大切にしながら議論を深めていきたいと考えています。ゼミでは、スポーツをプレイした経験、観戦経験は問いません。スポーツについて知りたい・語りたいという強い気持ちがあれば、ぜひ一度研究室に足を運んでみて下さい。

 それでは今後ともよろしくお願いします。