経済学部教員コラム vol.101
政策と公文書管理
今からおよそ10年前、2014年8月に発生した西日本集中豪雨により、広島市内では関連死を含めて77人が亡くなりました。
特に、安佐南区八木地区では、住宅開発が盛んだった高度経済成長期に新たに開発された、山沿いの地域に被害が集中しました。この新たに開発された地域は、もともとは市街化調整区域という、都市計画区域でも開発を抑制する方向性の地域区分でした。ところが、高度経済成長期に逆に市街化を推進する、市街化区域に編入され、住宅が多数販売されました。
その詳しい経緯は明らかにはなっていませんが、2014年の豪雨災害では、もともとの集落があった地域の被害は少なく、新規開発された宅地に被害が集中しました。
ここから、政策的な失敗による犠牲者が出たのではないか、という仮説を立てることができます。ところが、当時の政策決定の経緯を示す資料は、既に役所では廃棄されていて、どのような経緯で市街化区域になったのかを知ることはできません。ちなみに、終戦前後の日本軍も公文書を大量に廃棄したことが知られています。
過去の政策を検証し、それを踏まえて政策を改善して行くためには、公文書の適切な管理が不可欠であるにもかかわらず、この点が不徹底であることが我が国の行政における課題となっています。 EBPMと呼ばれる証拠やデータによる政策形成が注目されて、多くの経済学者が現場で活躍していますが、これを支える公文書管理の改善もまた、重要な政策課題です。関東学院大学経済学部では、経済学のみならず、関連する様々な分野の専門家が皆さんをお待ちしています。ぜひ、一緒に学んでみませんか。