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経済学部教員コラム vol.105

経済学部教員コラム vol.105

河内春人

経済学部で日本史を担当しいる河内春人です。専門は日本古代史ですが、授業では日本史全般を担当しています。経済学部では教職免許を取ることができますが、その際に日本史は必修であり、その授業を教えています。もちろん教職を取らなくても履修できます。

さて今年は巳(へび)年です。日本史で蛇に関するもっとも古い史料は何でしょう?実は「漢委奴国王」と刻まれた金印です。つまみの部分は蛇をかたどっています。

蛇に見えないという人もいるかもしれません。それは正しい。造形が不十分であることについては研究上でも指摘されています。魏志倭人伝によれば倭人は全身に入墨をしていたが、水に潜って魚などを捕る際に水蛇に襲われないようにすることが由来であると記されています。当時の中国は東方の倭に蛇のイメージを抱いていたのです。

ちなみにつまみには穴が空いていますが、そこにはひもを通していました。印の材質によってひもの色が決まっており、金印の場合は紫のひもでした。

ところで印ですが、当時は朱肉で紙に押すのではありません。手紙を入れた箱などに封をするために粘土を用い、そこに印を押し付けて乾燥させて開けていないことを示すために使われました。過去の遺物に対して現代的な感覚で用途を理解しようとすると思わぬ間違いを犯すことがあります。そうしたことを一つ一つ解きほぐすのが日本史の研究の醍醐味でもあります。