Column

経済学部教員コラム vol.52

経済学部教員コラム vol.52

真保 智行

パッキャオ対メイウェザー

先日、パッキャオ対メイウェザーというボクシングの試合が行われ、世界的に注目されまた。特に、ファイトマネーがそれぞれ約100億円と約150億円らしく、彼らの2015年のスポーツ選手の最高収入の1位、2位となることは確実のようです。

結果はメイウェザーが判定で勝ち、戦績はなんと48戦48勝となったのですが、試合内容については批判も多かったです。その理由はメイウェザーの戦い方が守備的だったためですが、この点については一経営学者として考えさせられるところがありました。

私はそれほどボクシングには詳しくないのですが、ボクサーには大きく分けて、インファイターとアウトボクサーがいます。インファイターはパンチ力が強く、相手の懐に踏み込み、接近戦に持ち込もうとします。一方、アウトボクサーは相手と距離をとり、ヒット・アンド・アウェーやカウンターでポイントを稼いでいきます。基本的にパッキャオは前者で、メイウェザーは後者です。

最近のメイウェザーの戦いを見てみると、あまりにもディフェンスやカウンターが上手く、試合の中盤以降で完全にペースを握ることが多いのですが、相手を倒しにいきません。その姿勢が多くの人から批判されるわけです。普通に考えれば、メイウェザーには相手をKOする力があり、相手を倒せば、さらに人気がでるはずです。では、なぜ彼はKOしようとはしないのでしょうか?

相手を倒しにいくには、インファイト的な要素も必要になります。例えば、足を止めて、強いパンチを打つということです。しかし、アウトボクサーであるメイウェザーにとっては、そうしたスタイルは自分の戦略や能力とはフィットしません。結果として、ポイントで圧倒的に有利でも、KOされてしまう可能性が高まります。つまり、彼の戦略にはブレが一切ないのです。

こうしたメイウェザーのスタイルには勉強させられる点もあるように思えます。例えば、企業は多様な客を獲得しようと、あれもこれも追及し、そのニーズに答えようとすることがあります。すると、一時的には売上が増えて儲かりますが、戦略の一貫性が失われ、長期的には業績が悪化してしまうでしょう。メイウェザーの議論は企業の経営にも通じる話だと思います。個人的にはパッキャオの方が好きですが。