経済学会講演会「途上国障害者の貧困削減ーかれらはどう生計を営んでいるのかー 」を実施
12/1に、経済学会講演会「途上国障害者の貧困削減ーかれらはどう生計を営んでいるのかー 」というタイトルで、日本貿易振興機構アジア経済研究所 新領域研究センター 研究員の森壮也先生にご講演頂きました。
森壮也先生は、開発経済学や障害学、経済学(特に統計学や生計分析)のそれぞれ重なる学際的な研究領域として、アジア経済研究所で行ってきた「障害と開発」というテーマを紹介してくださいました。
まず、世界各国で障害者に関する統計で、障害者*の数に大きな違いがあることから、実態を捉えることが難しいことを指摘しました。その実態をとらえるためには、実際に現地でどのように社会のレベルで―すなわち国や自治体と家庭や個人のレベルでそれぞれ障害がとらえられているかについて実地調査を行う重要性を指摘しました。また、量的・質的な研究方法を組み合わせる必要がありました。そこで、森先生を含む研究グループは、フィリピンでの調査を計画しました。その調査には、様々なタイプの障害者も調査員として活躍したことが紹介されました。
森先生の調査は、これまで「障害者」としか漠然と知られていなかったところを、障害のタイプ別に、どのような課題があるか、明らかにするものでした。途上国の障害者はどのように生計を成り立たせているか、フィリピンの都市部と農村部における理論的な枠組みと調査の方法とその結果を詳細にご講義いただきました。最後に、アフリカや南アジア、ミャンマーやベトナムなどの他の東南アジアでの調査の写真やエピソードを共有してくださいました。
ちょうど聴覚障害者が登場する「silent」というテレビドラマが放映された折りでもあり、経済学部でも初めてのろう者による講義ということで、2名の専門の手話通訳士を配置して講演を実施致しました。日本手話という言語や通訳を通じたコミュニケーションスタイル、そもそも日本手話や手話はどのような言語なのか、ということを学ぶよい機会となりました。一方で、手話通訳者の専門性や重要性は、社会の中で十分に評価・理解されたとはいえないのが現状です。参加者にとって、途上国での生計という経済的な側面に関して、SDGsの「誰もが取り残されない」社会はどのように可能かという点について、考えを深める機会となりました。また、運営した教員にとっても、「誰もが取り残されない」コミュニケーションという点において、日本国内でも課題が残されていることを、深く考える機会となりました。