経済学部教員コラム vol.16
「土砂災害を引き起こす降雨イベントのモニタリング」
どのような雨が降った時に、土砂災害が発生しやすいのでしょうか?
日本では毎年、雨による土砂災害が発生しており、社会・経済に大きな損害を与えています。このため、土砂災害の発生予測や危険度評価に関する研究がたくさん行われています。
私達の研究グループでは、土砂災害を発生させる雨に「短時間集中型」と「長時間継続型」とがあることを見つけ、土砂災害を引き起こす雨のモニタリングシステム(SWING system)を開発しました。このシステムは、http://lagis.geog.ues.tmu.ac.jp/swing/ において閲覧可能です。
私達の研究グループでは、これまでに日本列島で発生した約1,000件の土砂災害と降雨イベントとの関係を解析し、それらの雨が「短時間集中型」と「長時間継続型」とに分類できることを明らかにしました。短時間集中型は、短時間の強い雨で土砂災害が発生するパターンです。また長時間継続型は、長時間の断続的な降雨により土砂災害が発生するパターンです。
これらの研究結果と、気象庁の雨量データ(「1 kmメッシュ解析雨量GPV)および土壌雨量指数と呼ばれる指標を用いて、日本列島における現在の降水イベントをリアルタイムで解析し、土砂災害を引き起こす降水イベントをモニタリングするシステム:SWING system(プロトタイプ)を開発しました。解析結果はhttp://lagis.geog.ues.tmu.ac.jp/swing/ で公開しています。また、2010年以降に発生した土砂災害事例を検証した結果、SWING systemでは土砂災害を引き起こす降水イベントの特徴を事前に把握可能であることが示されました。
今後に解決すべき課題は多いですが、SWING systemを土砂災害情報として応用できる可能性があります。特に、2種類の降水イベントでは発生する土砂災害の形態が異なることが考えられ、例えば短時間集中型では迅速な土砂災害の警戒が必要であり、長時間継続型では長時間の警戒が必要といった、土砂災害対策への貢献が期待されます。
参考文献:齋藤 仁、中山大地、泉 岳樹、松山 洋 2011. 土砂災害を引き起こす降雨のリアルタイムモニタリング−2種類の降雨イベントに着目したSWING systemの構築と検証−. GIS−理論と応用 19, 25-34.
Saito, H., Nakayama, D. and Matsuyama, H. 2010. Two types of rainfall conditions associated with shallow landslide initiation in Japan as revealed by Normalized Soil Water Index. SOLA (Scientific Online Letters on the Atmosphere) 6, 57-60 (doi:10.2151/sola.2010-015).
問い合わせ先: E-mail: hsaito@kanto-gakuin.ac.jp
(共通科目教室 齋藤 仁)