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経済学部教員コラム vol.20

経済学部教員コラム vol.20

上代 雄介

「講義科目紹介: 基礎ミクロ経済学」

このコラムが掲載されるときには、春学期の授業が始まっている頃かと思います。

春学期に私が担当している講義科目の中に、「基礎ミクロ経済学」があります。ミクロ経済学は、人々が(合意の上で)行う取引・交換によって生み出される利益(経済学の用語では、「余剰」と呼ばれます)について考える分野です。
商品に価格をつけて、需要と供給のバランスによって商品を不満なく配分させようとする仕組みは市場メカニズムと呼ばれます。
ミクロ経済学では、市場が上手く機能する場合としない場合の違い、および、その違いが生じる理由について考えます。

市場が上手く機能しない要因はいくつかあるのですが、ここでは、その中の一つである情報の非対称性について説明します。
情報の非対称性とは、売り手と買い手の持っている情報が異なる状況のことで、有名な例としては、中古車の売り手と買い手のケースがあります。情報が非対称なとき、なぜ市場が機能しなくなるのか、考えてみましょう。

いま、ある人が、中古車を売ろうとしています。中古車を買おうとしている人は、その車の詳しいコンディションは一見しただけではわからないので、外観・走行距離などをもとにして平均的な買い取り価格をつけます。すると、もし売り手が、自分の車が平均よりもいい状態にあることがわかっていたとすると、その価格では安すぎると思い、車を売却しません。そうすると、平均的な価格でも売却するのは、平均の車よりも悪い状態の車を所有している人になるので、中古車市場に出回る車は、状態の悪い車ばかりになってしまい、質のよい中古車は市場に出回りません。

この例のように、情報の非対称性があると、商品(この例で言うと質のよい中古車)を取引するための市場が失われてしまう場合があります。

(経済学科 上代 雄介)