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経済学部教員コラム vol.81

経済学部教員コラム vol.81

林 博史

二つの国連

 調査のためにいろいろな国に行っていますが、ここではスイスのジュネーブにある国連欧州本部を紹介しましょう。国連本部はニューヨークにありますが、もう一つの国連本部と言えるのがここです。国際連合(国連)は二つの顔を持っていて、政治・軍事に関わるのがニューヨークの国連で、このジュネーブは人権に関わる国連です。国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)などもここに入っています。ニューヨークはどちらかと言えば国家と国家の利害が前面に出てくる場ですが、ジュネーブは国家ではなく一人一人の人間の尊厳と基本的人権を大切にしようという場です。

 この中に国際連盟と国際連合(国連)の資料室があります。この写真は国連欧州本部より一段高い場所にある国際赤十字本部から撮影したものです。国連本部の向こう側はなだらかな坂になっていてその下にはレマン湖が広がっています。湖の向こう側には雪をかぶったアルプスが見えています。写真の右に見える雪をかぶった高い山がモンブランではないかと思います。資料室は湖側に面しているので、窓から外を除くとアルプスの山々を見ることができます。

 日本では人権が軽視され、国連人権理事会や女性差別撤廃委員会、自由権規約委員会、社会権規約委員会などからの日本政府に対する勧告を日本政府や日本社会はことごとく無視するのが通例になってしまっています。また国際労働機関(ILO)の多くの条約に日本は参加していません。何日かここの資料室に通いましたが、日本という国は一人一人が人として大切にされていないと痛感させられた、ここでの調査でした。