Column

経済学部教員コラム vol.61

経済学部教員コラム vol.61

青柳 健隆

「物言う立場」

 はじめまして。4月から経済学部に着任した青柳健隆(あおやぎけんりゅう)です。本年度は主に健康スポーツの授業を担当しています。専門は「スポーツ科学」、その中でも特に「スポーツ教育学」という研究分野です。この分野では、「いかに教育的か」という立場から、運動やスポーツを考察していきます。そして例えば、本学の多くの学生も経験してきた(もしくは身近に存在していた)であろう運動部活動に関する研究を行っています。

 最近、運動部活動顧問の負担が大きいことがニュース等で報道される機会が増えてきたように感じます。運動部活動は学習指導要領(国の定めた教育マニュアルのようなもの)でも、学校教育の一環として行うことが示されていますが、確かに顧問の負担は大きく、疲弊している先生も多いのが現状です。しかも、保健体育の先生ではなく、かつ自分が経験したことのない競技の担当になる顧問が約4割もいることが報告されています。これは顧問にとっても、生徒にとっても望ましい状態とは言えないでしょう。

 さて、私たちはこの問題をどのように捉え、解決方法を探っていけばよいのでしょうか。教員の労働問題として考えるならば、対価とつりあわない労働(あるいは労働とつりあわない対価)は見直されるべきですし、コスト面からは学校で部活動を行うこと自体を抑制する必要もあると主張することもできます。しかし一方で、生徒のスポーツ環境を保障し、教育的な指導を行うことに主眼を置くと、やはり部活動は学校で行い、教育のプロである教員が指導・運営に当たることは妥当だと言えます。その場合は部活動の抑制ではなく、指導手当の増額や指導人材の増員が優先されるでしょう。

 このように、ひとつの物事も見る角度や立場によっては、違った提案につながることがあります。物事を多様な角度から見ることに加え、自身の立場を意識することにも気をつけたいものです。