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経済学部教員コラム vol.63

経済学部教員コラム vol.63

田林 雄

空間と時間の接点

 初めまして、この四月に経済学部に着任した田林と申します。私は河川や渓流の水質がどのように形成されるのか、ということを中心にこれまで研究してきました。今学期は「環境フィールドスタディ」という授業を担当していまして、主に野外で環境計測を行う予定です。といってもこれまで授業の日に限って雨が多くあまり屋外に出られていないので、これからの梅雨の季節どうなることか少し心配です。ちなみに環境計測では屋外の様々なものの形状(樹木、土地、人工物など)を測ったり、河川の流量や水質を計測する予定です。

 来学期からは「環境学」という授業を担当する予定でかつ私の専門なので、ここで少し環境について考えてみることにします。環境は、人間と自然があって、その両者の間に存在する概念的な言葉です。ここに空間を適用すると、例えば「森林域の〇〇%で樹木の立ち枯れが起こっている」とか、定量的に現象を扱えるようになります。しかし、そもそも空間の枠(評価範囲)をどう考えるかも重要な問題で、分母の「森林域」をどの範囲で考えるかによって立ち枯れ域のパーセンテージは大きく変化してしまうので注意が必要です。ここで、「流域」という言葉がヒントになると考えています。水は陸面を流域を一つの単位として循環していますので、例えば水循環を考える上で流域を研究対象領域の枠に設定することがしばしば行われます。その場その場に応じた「流域」のような意味を持った空間の枠を考えることに留意していきたいと考えています。

 一方で、ある環境が形成された成り立ちを時間軸で考えることも重要です。例えば、沿岸域の砂浜の消失が顕著な場所に砂を人工的に足してもまた砂浜が消失してしまう、ということがあるとしましょう。そこで、過去数十年の歴史を調べてみると沿岸部に流入する河川の上流域にダム群が出来た後に、ダムで土砂が堰き止められて沿岸域への土砂供給が減少し砂浜が消失するようになっており、人間が多少手を加えた程度では到底砂浜の回復は望めないといったことが明らかになるかもしれません。現前に存在する環境は過去の現象の蓄積の上に成立しているため、時間も環境を理解する上で欠くことはできません。

 以上、空間と時間をキーワードにあまり手段を限定せずに環境を考え研究・教育にあたりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。