Column

経済学部教員コラム vol.84

経済学部教員コラム vol.84

細谷 早里

TikTokなZ世代と日本の教育

毎年、年初めになるとユーラシア・グループによる「今年の世界の10大リスク」というものが出されます。ちなみに2022年のトップリスクは「中国のゼロコロナ政策の失敗」でした。2023年のトップリスクは誰もが納得する「ロシア」で、この2023年のリスク第9番目に「TikTokなZ世代」が登場しました。Z世代と言えば、今の大学生の年代にあたります。早速学生たちに「Z世代の何がリスクなのか」を問いかけてみました。学生たちからは「インターネット、SNSなしでは生きていけないから、これらのトラブルに巻き込まれる人が多いのではないか」、「SNSで見つけた誤った情報や偏った見方をすぐに信用してしまうのではないか」、「真偽のはっきりしないものをすぐに拡散してしまうのではないか」と言った声が聞かれました。ユーラシア・グループの説明によるとZ世代とは、ソーシャルメディアによって国境を超えてつながることができる真のグローバル世代であり、激動の時代の多様化した社会の中で生きてきたために、差別や不平等を強く意識し、進歩的な方向に向いている人たちだとしています。つまり、彼らの能力、行動力と可能性は評価されており、それゆえ、企業や政府は必然的に制度的、戦略的、政策的に大きな変化を求められることになることを意味しているのです。Z世代が社会に出ることにより、これまでの企業や公共政策のあり方が大きく覆されうることがリスクであると考えられているのです。

学生たちの回答は間違ってはいないかもしれませんが、どこか自己反省的で自己肯定感が低いようにも思われます。少しデータは古いですが、2013年の内閣府調査等から日本の高校生の自己肯定感が米国、中国、韓国の高校生よりもはるかに低いとの結果が出ています。文化的な差があることは否めませんが、教育のあり方にも大きく影響を受けているでしょう。調査の分析では、他者との比較で過度に自分に自信がなく、自分を無価値な存在だと感じている可能性があるとしています。確かに日本の学校教育では、他者と比較されることが多く、ひとつの答えを求められることが多いかもしれません。

Z世代の皆さん、皆さんの持っている潜在的な力に自信を持ってください。私自身は教育者として、Z世代の持つ強みが最大限発揮されることを期待し、それをリスクと感じずにいられるよう自己研鑽に努めたいと思います。